急性低音障害型感音難聴(ALHL)は、医学的には直接の根本原因が完全には解明されておらず「原因不明」とされる部分もありますが、耳の中で起きている病態メカニズムと、それを引き起こす日常的な誘因(きっかけ)について、以下の知見が報告されています。
1. 耳の中で起きている2つの主な病態メカニズム
- 内リンパ水腫(内耳の水ぶくれ)
聴覚を司る内耳の器官「蝸牛(かぎゅう)」の中で、内リンパ液が過剰に溜まって水ぶくれを起こす状態です。リンパ液の増大により膜が押し上げられて低音を感じ取る部分が圧迫され、低い音の聞こえにくさや耳が詰まった感じ(耳閉感)が生じます。
- 蝸牛頂(低音部)の血流障害・低血圧
低音を認識する部位は、蝸牛の最奥部にある「蝸牛頂(かぎゅうちょう)」です。この部位は栄養を送る血管の最末梢にあたるため、低血圧や交感神経の過緊張による血管収縮が起きると、血流が低下して低音障害が発生しやすいと考えられています。
2. 発症を引き起こす主な誘因(トリガー)と背景
- 精神的ストレス・睡眠不足・過労
疫学調査によると、発症前の状況として精神的疲労(約52%)、睡眠不足(約43%)、肉体的疲労(約41%)を挙げる患者が非常に多く、最大の誘因とされています。
- 体調不良・気圧の変化
風邪(上気道炎)などの感染症や、天候・気圧の激しい変化が発症の引き金になることもあります。
- 全身の体質・自律神経の乱れ
20〜30代の若年女性に好発し(男女比1:2〜3)、低血圧や肩こり、自律神経の乱れが影響しやすいとされています。また、生真面目で几帳面、責任感が強い性格傾向(ストレスを溜め込みやすい性格)も発症背景に関わっていると考えられています。
このように、「ストレスや疲労・睡眠不足によって自律神経や血流が乱れ、内耳に水ぶくれ(内リンパ水腫)や血流不全が生じること」が、急性低音障害型感音難聴の主な原因と考えられています。
3. 以前は突発性難聴と診断されていました
急性低音障害型感音難聴は、10年程度前までは診断基準の上で突発性難聴と明確に区別されていませんでした。私たちは40年前から自分たちで聴力検査を含めた耳鼻科的な検査をしていたため、とても鍼が効きやすい突発性難聴として治療に取り組んできました。
急性低音障害型感音難聴は、耳鼻科の先生がびっくりするぐらい、鍼治療が効果的です。イソソルビド(イソバイド)を2週間程度飲んでも、効果がなかったり、発症を繰り返したりする場合は鍼治療をご検討ください。