急性低音障害型感音難聴(ALHL)と蝸牛型メニエール病(メニエール病非定型例[蝸牛型])は、ともに「回転性めまいを伴わず、低い音の難聴や耳づまり感が生じる」という共通点があり、病態も同じ内リンパ水腫(内耳の水ぶくれ)と考えられている非常に近い疾患(連続した病態)です。
臨床的・診断基準における主な違いや関係性は以下の通りです。
1. 主な違いと診断基準上の位置づけ
「初発(単発)」か「反復(再発)」か
- 急性低音障害型感音難聴(ALHL): 初めて発症した単発例を含む疾患概念です。
- 蝸牛型メニエール病: 難聴、耳鳴り、耳閉感などの聴覚症状が増悪と軽快(悪化と回復)を反復・再発する状態を指します。
- 診断上の関係: 日本の診断基準(日本めまい平衡医学会・厚労省研究班)では、1回目の発症や初発例を「ALHL」と診断し、症状の再発・反復を繰り返すようになった段階で「蝸牛型メニエール病」と診断・移行するという整理がなされています。
典型的なメニエール病(回転性めまいを伴う確実例)への移行
- どちらも発症初期にはグルグル回る回転性めまいを伴いません。
- しかし、ALHLの反復例や蝸牛型メニエール病を長期的に経過観察すると、約20〜30%の割合で後に回転性めまい発作を起こすようになり、典型的なメニエール病(確実例)へ移行することが知られています。
2. 病態・検査・治療における共通点
- 病態: どちらも内耳(蝸牛)における内リンパ水腫(リンパ液過剰による水ぶくれ)が主な病理的要因と考えられています。
- 検査所見: 3T-MRI(内耳造影MRI)検査での内リンパ水腫の描出、蝸電図検査における-SP/AP比の異常増大、グリセロールテスト陽性など、生理検査・画像検査でも共通した特徴を示します。
- 治療方針: 内リンパ水腫を軽快させる浸透圧利尿薬(イソソルビド)やATP製剤、ビタミンB12などの薬物療法に加え、発症・再発の誘因となるストレスや過労の軽減、睡眠確保、水分摂取などの生活指導が共通して行われます。
3. 耳鼻咽喉科では
「1回限りの初発状態をALHL」「難聴や耳づまりの再発・変動を繰り返す状態を蝸牛型メニエール病」と区別することが一般的ですが、両者は本質的に同じ内リンパ水腫を基盤とした連続する病態(同一の疾患スペクトラム)として捉えられています。
4. 鍼治療と相性がいい病気です
急性低音障害型感音難聴も蝸牛メニエールも、ストレスが原因で内リンパ水腫が発生している病態なので、鍼治療がとても効果的です。ストレスを含めた全身の鍼治療をすることで症状が改善することが多いです。
ただし、あまりにもストレスの状態が強かったり、ホルモンバランスが崩れたりすると悪化を繰り返すこともあります。ストレスの状態はサーモグラフィで全身の温度分布を検査すると確認できます。
私たちは、40年前から、難聴の鍼治療に取り組んできました。イソソルビド(イソバイド)を2週間程度飲んでも、効果がなかったり、発症を繰り返したりする場合は鍼治療をご検討ください。