耳管狭窄症の中には、内服薬や耳管通気などの保存的治療ではなかなか治らない(難治化・長期化する)ケースが存在します。
文献において「治りにくい理由」や「難治例へのアプローチ」は以下のように示されています。
1. 保存的治療で治りにくい「狭義の耳管狭窄症(器質的狭窄)」
- 薬や通気の効果が限定的:耳管が機能的に開きにくいだけでなく、実際の内腔が物理的に狭くなっている「狭義の耳管狭窄症(器質的閉塞)」では、マクロライド系抗菌薬の少量長期投与やステロイド、耳管通気といった保存的治療の効果が限定的になります。
- 改善率の違い:軽症例では保存的治療で約70%が著明改善または治癒に至りますが、中等症〜重症の狭窄例では半数以上で効果があがらず(不変または悪化)、治療に抵抗性を示すことが多いとされています。
- 不可逆的な構造変化:過去の強い炎症による器質的な瘢痕(はんこん)形成、放射線照射やシェーグレン症候群による耳管の線毛機能低下、成人における組織の不可逆的な変化などが原因の場合、一般的な処置や内服だけでは元の状態に戻りにくくなります。
2. 手術を行っても「根本的治癒」にならない場合の対応
- 鼓膜換気チューブ留置術の限界:保存的治療で改善しない場合、中耳の換気を保つために鼓膜換気チューブ留置術が行われます。しかし、これは中耳の気圧格差や貯留液を解消する処置であり、「耳管機能そのものを根本的に治す治療ではない」ため、チューブが脱落・抜去された後に再発し、長期間の留置が必要になる例があります。
- 耳管バルーン開大術(BET)の適応:低侵襲に耳管を広げる耳管バルーン開大術(BET)などの新しい選択肢もありますが、非常に重症な狭義の耳管狭窄症に対する効果としては限定的な可能性も指摘されています。
- 補聴器等による機能代償:耳管の高度な閉塞により中耳機能の根本的な改善が望めない場合は、気導・骨導補聴器や人工中耳などを用いて聴力やQOL(生活の質)を代償する方針が検討されます。

3. 医療における説明と治療のゴール
- 「治らない」と決めつけない関わり:診療指針では、医師が根拠なしに「治らない」と宣告したり、改善策を提示せずに「慣れなさい」と告げたりすることは避けるべきとされています。
- 症状のコントロールとQOL向上:耳管自体の完全な正常化が困難な場合であっても、チューブ留置や各種の処置、生活指導などを組み合わせることで、耳閉感や難聴による苦痛を大幅に和らげて生活に支障のない状態を目指すことができます。また、不快感から強い不安や失聴恐怖を抱えている患者に対しては、適切な情報提供やカウンセリング・認知行動療法的アプローチも有用とされています。
