急性低音障害型感音難聴|治療法について

急性低音障害型感音難聴(ALHL)の治療では、主な病態と考えられている「内リンパ水腫(内耳の水ぶくれ)」や「内耳の血流・代謝低下」、および「ストレスや自律神経の乱れ」を改善するための薬剤が用いられます。

西洋薬と漢方薬に分けて、それぞれの役割や代表的な薬を分かりやすく解説します。

1. 西洋医学(西洋薬)の主な治療薬

ALHLの薬物療法では、水ぶくれを減らす薬や内耳の働きを助ける薬を中心に処方されます。

浸透圧利尿薬(イソソルビド / 商品名:イソバイドなど)

  • 役割: 内耳の「内リンパ水腫(過剰なリンパ液の水ぶくれ)」を軽減させるALHLの代表的な第一選択薬です。
  • 特徴: 独特の苦味や渋みがあり服用しにくい面もありますが、ゼリー製剤なども用意されています。

内耳循環改善薬・代謝改善薬(ATP製剤:アデホスなど)

  • 役割: 内耳の血管を拡張させて血流を良くし、内耳の感覚細胞の代謝・機能を高めます。

ビタミンB12製剤(メコバラミン / 商品名:メチコバールなど)

  • 役割: 傷ついた内耳の神経や感覚細胞の修復・代謝を促す目的で併用されます。

副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロン、デキサメタゾンなど)

  • 役割: 強力な抗炎症作用や抗浮腫作用により、症状を抑える目的で使われます。
  • 特徴: 突発性難聴に準じて短期的に投与されることがありますが、ALHLは予後が比較的良好であることや、副作用(血糖上昇など)への懸念、あるいは耳管開放症が隠れている場合の悪化リスクから、患者の症状や経過に応じて慎重に適応が判断されます。

抗不安薬・睡眠導入薬

  • 役割: ストレスや不眠、耳閉感・耳鳴りによる不安や焦燥感が強く日常生活に支障がある場合に、自律神経や睡眠を整える目的で補助的に処方されます。

2. 東洋医学(漢方薬)の主な治療薬

漢方医学では、ALHLの病態を水分代謝の異常である「水滞(すいたい)」や、エネルギー不足・低血圧である「気虚(ききょ)」、ストレスによる気の滞りである「気鬱(きうつ)」などと捉え、体質や症状に合わせて処方されます。

五苓散(ごれいさん)

  • 特徴: 体内の水分バランスを整える代表的な「利水剤(りすいざい)」です。イソソルビドの服用が困難な場合の代用として使われるほか、ステロイドと併用することで相乗的な効果が得られたという報告もあります。

柴苓湯(さいれいとう)

  • 特徴: 五苓散に小柴胡湯(抗炎症作用)を合わせた処方です。水分調節作用と抗炎症・ステロイド様作用を併せ持ち、耳の詰まり感や難聴の改善に用いられます。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

  • 特徴: 低血圧や慢性的な疲労・体力の低下(気虚)があり、疲れやストレスによって耳閉感や難聴の症状が変動・再発しやすい患者に特に効果的とされています。

桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう) / 桂枝加朮附湯

  • 特徴: 首筋や肩のこり、体の冷え、自律神経の緊張を伴うALHLに対して、血流改善や昇圧目的で併用されます。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

  • 特徴: 女性に多く見られる冷え症や月経不順・更年期障害、血行不良(血虚)が関与している再発例などでよく選択されます。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) / 柴朴湯(さいぼくとう)

  • 特徴: 気分がふさぐ、喉や耳に異物感・塞がり感がある、ストレスや不安が強い場合の精神的なアプローチとして用いられます。

3. 治療における大切なポイント

ALHLは薬を飲むだけでなく、発症の引き金となった生活習慣の改善を同時に行うことが回復や再発予防に不可欠です。

  • 十分な睡眠と休養の確保
  • 軽い有酸素運動(1日8,000歩程度のウォーキングなど)で内耳の血流や水代謝を促す
  • 適切な水分摂取(水分をしっかり摂って利尿を促す)と減塩

薬の選択や併用については、症状の重さや体質、受診時の経過によって医師から最適な組み合わせが提案されます。

4. 鍼治療について

鍼治療がとても得意な病気です。ストレスが原因になっていることが多いので、ストレスの状態を可視化することが重要です。それには、サーモグラフィで全身の体表温度を確認すると良いです。

ストレスがかかり始めると、まず顔の温度が下がります。その後、手の温度、足の温度と下がります。急性低音障害型感音難聴がお薬で治らない人は、腰の腎臓の高さにあたる体表温度が低下していることが多いです。

そうしたところから一つ一つ丁寧に、鍼治療でカラダの機能を取り戻していくと、お薬で治らない急性低音障害型感音難聴も回復することが多いです。

この記事を書いた人

副院長 / 吉池 美奈子

宮崎県の名門鍼灸一家に生まれる。幼いころから鍼で風邪を治してもらうため、病院に連れていかれる友人をうらやましく思って育つ。患者さんへの寄り添いを1番に大切にし、スタッフ育成と耳鼻科疾患治療に奔走する二児の母。

副院長 / 吉池 美奈子

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宮崎県の名門鍼灸一家に生まれる。幼いころから鍼で風邪を治してもらうため、病院に連れていかれる友人をうらやましく思って育つ。患者さんへの寄り添いを1番に大切にし、スタッフ育成と耳鼻科疾患治療に奔走する二児の母。

副院長 / 吉池 美奈子