若年発症型両側性感音難聴|症状・原因・治療法・鍼灸の役割まで丁寧に解説

「まだ若いのに、だんだん聞こえが悪くなってきた」「両耳の聞こえが低下していて、日常生活に支障を感じている」──そうしたお悩みを抱えている方の中には、若年発症型両側性感音難聴という疾患を発症している可能性があります。この難聴は思春期から40歳未満という比較的若い年代で発症し、両方の耳の感音機能が徐々に損なわれていくのが特徴です。

このような進行性の難聴は、見た目にはわかりづらく、周囲からの理解が得られにくいことも多いため、本人にとっては精神的にも大きな負担となります。教育や就労、対人関係といった人生の大切な局面において、「聞こえにくさ」はさまざまな壁となるのです。

本記事では、信頼できる文献・政府資料・学術論文をもとに、この疾患について医療と補完医療の両面から詳しく解説してまいります。また、当院で実践している鍼灸を活用した補助療法についてもご紹介し、皆さまにとって少しでも希望となる情報を提供できればと願っております。

第1章:若年発症型両側性感音難聴とは?

この疾患は、比較的若い年代で両耳の感音性難聴を発症する点に特徴があります。一般的に「感音難聴」とは、内耳や聴神経に何らかの障害があることで音の情報を脳に正しく伝えることが難しくなる状態を指します。そのうち、両側の耳に同時に起こる場合が「両側性感音難聴」と呼ばれます。

若年で発症するケースは遺伝的な要因が関与していることが多く、特にGJB2などの遺伝子変異が関与する例が日本人に多く報告されています。こうした遺伝性難聴は、生まれつき存在する場合もあれば、成長とともに徐々に進行するタイプもあります。したがって、症状の出方には個人差があり、長年気づかれずに経過することも少なくありません。

第2章:症状と進行の特徴|日常生活への影響

最初は「人の声がこもって聞こえる」「周囲の音が少し遠く感じる」といった微細な変化から始まることが多いです。特に高音域から聞き取りにくくなることが多く、女性の声や子どもの声、電子音などが聞き取りづらくなる傾向があります。

やがて症状が進行すると、会話中の言葉の一部が抜け落ちたり、補聴器を装着しても音がはっきりしないという状態になります。これにより学校での授業が聞き取りにくくなったり、職場での会議に支障をきたすなど、社会参加に困難を伴うようになります。人との関わりを避けがちになることもあり、結果として孤立感やうつ傾向に至ることもあります。

第3章:考えられる原因と遺伝的背景

若年発症型の難聴のうち、遺伝的な背景が明確なものは「遺伝性難聴」と分類されます。日本ではGJB2遺伝子の異常が最も多く、他にもSLC26A4やOtoferlin、CDH23など複数の遺伝子が関連しています。また、ミトコンドリアDNAの変異も注目されており、母系遺伝により耳だけでなく神経・筋肉にも症状が及ぶことがあります。

一方で、感染症(風疹やサイトメガロウイルスなど)や自己免疫疾患、中毒性薬剤(例:ストレプトマイシンなど)など、後天的な要因が関与することもあります。これらの要因は複雑に絡み合うこともあるため、正確な診断が不可欠です。

第4章:診断に用いられる検査とその意義

診断の第一歩は、純音聴力検査によって聞こえの程度と音域の特徴を把握することです。次に語音弁別能検査で、実際の会話音に対する理解力を測定します。補助的に耳音響放射(OAE)や聴性脳幹反応(ABR)を行い、内耳機能や聴覚経路の異常を見極めます。

加えて、MRIによる脳・聴神経の構造評価や、血液検査による自己免疫マーカー、遺伝子検査など、症例に応じた精密検査が行われます。早期発見が難聴の進行抑制や対処方針の決定に大きく寄与するため、専門医のもとでの評価が非常に重要です。

第5章:現在の医学的治療法とその課題点

若年発症型両側性感音難聴に対しては、まず補聴器による聴力補完が検討されます。近年の補聴器はデジタル処理によって音質が改善されており、高度〜重度難聴の方でも使用できるタイプが多くなっています。しかし、内耳の有毛細胞や聴神経自体が損傷している場合、**「音は聞こえるが言葉が分からない」**といったケースがあり、十分な補助効果が得られない場合もあります。

このような場合、**人工内耳(CI)**の適応が検討されます。人工内耳とは、内耳の蝸牛に電極を埋め込み、音の信号を直接聴神経に伝える医療機器です。特に小児においては、早期に手術を行うことで言語獲得の機会が確保されるとされています。

一方で、根本的な聴力回復につながる薬物療法や遺伝子治療は、まだ研究段階であり、現在は対症療法が中心です。そのため、患者さまには「いかに聞こえを補うか」「どう社会生活を支えるか」が非常に重要な課題となります。

第6章:鍼灸による補完的治療の可能性

西洋医学の治療と並行して、近年注目されているのが東洋医学的アプローチです。鍼灸治療では「耳は腎の華(け)である」とされ、腎虚(じんきょ)や気血の滞りが耳の機能低下につながると考えられています。これを基に、鍼灸では以下のような治療が行われます。

  • 腎経・胆経・三焦経への刺鍼(例:太渓、腎兪、足臨泣)
  • 耳周囲の局所刺激(例:聴宮、翳風、完骨)
  • 自律神経系の調整(例:内関、百会など)

鍼刺激により内耳への血流改善や神経伝達の正常化、自律神経のバランス改善が期待されるとされ、一部の臨床研究では、軽度~中等度の感音難聴に対する有効性も示されています。また、難聴に伴う耳鳴り・めまい・肩こりなどの随伴症状にも一定の改善が見られることがあります。

ただし、鍼灸はあくまでも「補助療法」であり、医学的診断と併用しながら慎重に行うべきです。当院では耳鼻咽喉科医の判断を基準にしながら、鍼灸治療用の聴力検査を独自にしながら科学的根拠と東洋医学の知見を融合した治療を提供しております。

第7章:日常生活における注意点と工夫

難聴を抱えて生活するには、環境や会話の工夫がとても重要です。たとえば、次のような対策が推奨されます。

  • 静かな場所で会話をする(雑音の多い場所を避ける)
  • 相手の顔を見ながら話す(口の動きや表情で内容を補完)
  • ゆっくり、はっきりとした口調で会話する
  • 筆談アプリや文字起こしアプリの活用
  • 周囲に難聴のことを丁寧に伝える

また、聴力が落ちることによる疲労感や集中力の低下もよく見られます。聴覚に頼らない情報伝達方法(例:視覚資料や字幕)を積極的に取り入れることで、精神的なストレスも軽減されます。

「聞こえづらい」ことに罪悪感を抱く必要はまったくありません。自分に合ったペースで、無理なく生活できる工夫を積み重ねていくことが大切です。

第8章:教育・福祉・就労支援の制度について

日本には難聴者を支えるさまざまな制度が存在します。まず、小児期に発見された場合は「難聴学級」や「特別支援学校」での専門的な教育支援が受けられます。就学時健診や新生児聴覚スクリーニングの結果をもとに、教育委員会が支援を行います。

また、重度の難聴と認定されれば**身体障害者手帳(6級~2級)**の交付対象となり、以下のような支援が受けられます。

  • 補聴器や人工内耳の給付・助成
  • 通院・通学にかかる交通費の助成
  • 聴覚障害者向け職業訓練の支援
  • 手話・要約筆記者の派遣制度

成人においても、障害者雇用枠での就労や、在宅勤務といった多様な働き方が進んでおり、「聞こえづらくても働ける社会」が少しずつ整いつつあります。自分の状態を正しく理解し、適切な支援を受けることが、生活の安定と自己実現につながります。

第9章:家族や周囲の理解が支えになる

難聴は「見えない障害」といわれ、外見では気づかれにくいために誤解や孤立感を生みやすい特徴があります。とくに若い患者さんの場合、家族や職場・学校での理解が十分でないと、心身のバランスを崩すこともあります。

家族には以下のような配慮が望まれます。

  • 呼びかけるときは肩を軽くたたいてから話す
  • 会話は正面から、ゆっくりとした口調で
  • 補聴器や人工内耳の装用を前向きに支援する
  • 難聴について一緒に学ぶ姿勢を持つ

一方で、本人も「聞こえにくいことを遠慮せずに伝える」ことが大切です。お互いが歩み寄ることで、よりよいコミュニケーション環境が生まれます

第10章:将来に向けてできることと私たちの想い

若年発症型の感音難聴は、まだ完全な治療法が確立していない難病の一つではありますが、医療の進歩は日々加速しています。遺伝子治療や幹細胞再生医療に関する研究は着実に進行しており、将来的には「難聴が治る時代」が訪れる可能性もあります。

当院では、耳鼻科専門医による診察だけでなく、補完医療としての鍼灸や漢方の導入も行いながら、個々の患者さまに合わせた総合的なケアを目指しています。症状の軽重に関わらず、ひとりひとりの苦悩に耳を傾け、少しでも前向きな生活が送れるよう、専門的かつ温かいサポートを心がけております。

「聞こえ」に不安を感じたとき、それはご自身と向き合う大切なサインです。どうぞ、おひとりで抱え込まず、私たち専門家にお気軽にご相談ください。

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Profile

院長 / 吉池 弘明

頭の中は、つねに愛する家族と鍼治療のことでいっぱい。 耳鼻科疾患治療への探究心が強く、日々新たな治療法を模索する「はり・きゅうの日生まれ」62歳。 お医者様とは違った角度からの聴力検査と全身検査を取り入れ、のべ25万人を検査。 全国から来院する患者さんへの治療成果を上げている。

院長 / 吉池 弘明