
ある朝、鏡を見て「顔がなんとなくゆがんでいる」と感じたり、うがいをするときに口角から水がこぼれたり……。
そんな突然の異変に、驚きと不安で胸がいっぱいになっている方も多いのではないでしょうか。
「これって脳の病気?」「一生治らなかったらどうしよう」
そんな風に一人で悩む前に、まずは落ち着いて「今の状態」をチェックしてみましょう。実は、顔のゆがみを診るとき、医師はまず「命に関わる病気ではないか」を確認します。重大な病気が隠れていないかを先に確認していく、この考え方を「除外診断」と呼びます。
今回は、その判断基準を分かりやすく紐解いていきます。
1. 最優先の確認:まずは「脳の病気」ではないか?
顔がゆがんだとき、真っ先に心配になるのは脳梗塞などの脳卒中ですよね。医師もまずはこれを確認します。
見分ける最大のポイントは「おでこのシワ」
実は、脳からくる麻痺(中枢性)か、顔面神経そのものによる麻痺(末梢性)かは、おでこを見れば分かります。
- 脳の病気が疑われる場合: 麻痺がある側でも、おでこにシワを寄せることができます。 眉毛も動かせるのが特徴です。
- 顔面神経麻痺(ベル麻痺など)の場合: 麻痺がある側は、おでこがツルツルになり、シワを寄せることができません。
なぜなら、おでこを動かす神経は左右両方の脳から指令を受けているため、片方の脳にダメージがあってもカバーできるからです。反対に、脳から出た後の「顔面神経」がトラブルを起こすと、おでこも含めた顔半分がすべて動かなくなります。
もし「おでこのシワは寄るのに口元だけ歪んでいる」場合や、「手足のしびれ、ろれつが回らない」といった症状があるなら、迷わず脳神経外科や救急を受診してください。
2. 次の確認:急いで治療が必要な「ハント症候群」か?
脳の病気でないと分かったら、次はウイルスが原因で重症化しやすいタイプかどうかをチェックします。その代表が「ラムゼイ・ハント症候群」です。
見逃せない3つの特徴
これは、子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルス(VZV)が、疲れやストレスで再活性化することで起こります。
- 耳の症状: 耳の穴やその周囲に「水ぶくれ」や「赤み」がある、または強い痛みがある。
※水ぶくれが最初は目立たず、数日後に出てくることもあります。 - めまい・難聴: 音が聞こえにくい、耳鳴りがする、目が回る。
- 強い麻痺: ベル麻痺に比べて麻痺が重くなりやすい傾向があります。
このタイプは治癒率が約60%とされており、早期に強力な抗ウイルス薬での治療が必要になります。耳の症状が後から出ることもあるので、注意深く観察することが大切です。
3. 最終的な診断:最も多い「ベル麻痺」
脳の病気でもなく、耳の水ぶくれなどの明らかな原因も見当たらない場合、ここで初めて「ベル麻痺」と診断されます。
顔面神経麻痺全体の約60〜70%を占める最も一般的なタイプです。かつては原因不明とされてきましたが、現在は単純ヘルペスウイルス(HSV-1)が関わっていると考えられています。適切に初期治療を行えば、90%以上の方が回復を目指せるとされており、多くの場合、過度に悲観する必要はありません。
4. 注意が必要な「ゆっくり進むゆがみ」
ある日突然ではなく、数週間から数ヶ月かけて徐々に顔が動かなくなってきた……。そんな場合は、神経を圧迫する腫瘍(耳下腺腫瘍や聴神経腫瘍など)が隠れている可能性があります。「治りが遅い」「顔がピクピク痙攣する」といった場合も、MRIなどの精密検査を検討すべきサインです。
5. まとめ
顔のゆがみに気づいたら、まずは慌てずにおでこのシワを確認してください。
- おでこのシワは寄る? 手足もしびれる? → 脳神経外科へ。
- おでこが動かない(耳鼻科領域) → 耳鼻咽喉科へ。
- 耳に水ぶくれや痛み、めまいがある → ハント症候群(要・早期治療)
- 顔の動きだけが悪い → 多くはベル麻痺(最も一般的)
医師は「命に関わるもの」から順に可能性を絞り込んでいます。正しく見極め、発症後できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診すること。それが、きれいな笑顔を取り戻すための最大の近道です。
顔面神経麻痺の鍼灸外来
顔面神経の状態を、耳の反応を通して客観的に捉えるための方法です。
顔面神経の反応を確認する検査の一例
「病院での治療は終わったけれど、顔の動きが戻らない」
「後遺症が残らないかが心配」
私たちはそうした不安を抱える患者さんと40年間向き合ってきました。
当院では、アブミ骨筋反射を確認します。顔面神経は、耳の奥にある小さな筋肉(アブミ骨筋)にもつながっています。
音に対するこの筋肉の反応を確認することで、顔面神経が刺激に反応できる状態かを知る重要な手がかりになります。
この検査には専門機器と解析技術が必要なため、一般的な鍼灸院で行われることはまずありません。 感覚や印象だけに頼らず、今の体の状態を落ち着いて見つめたい方のための情報提供の場として、 ご相談をお受けしています。
参考文献
この記事は、以下の資料に基づき作成されました。
- 顔面神経麻痺のリハビリテーション(医歯薬出版株式会社)
- 顔面神経障害(中山書店)
- 鍼灸臨床メカニズム最新科学(医歯薬出版株式会社)
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