顔面神経麻痺を乗り越える|日常生活の工夫と精神的ケアの実践法

顔面神経麻痺を乗り越えよう!日常生活におけるコツや心のケア方法をご紹介

朝起きて、昨日まで当たり前だった「自分の笑顔」が作れない。鏡を見るのが怖くなり、外に出れば周囲の視線が突き刺さるように感じる……。

顔面神経麻痺は、単にお顔が動かなくなるだけの病気ではありません。実は、それと同じくらい「心」にも負担がかかる病気です。

「どうしてこんなに不安なんだろう?」「自分の心が弱いせいか?」と一人で悩んでいるあなたへ。その不安の正体と、少しでも前向きに毎日を過ごすためのヒントを、専門家の視点からお話しします。


その「極度の不安」や「不眠」、実は薬の副作用かもしれません

今、あなたは「夜、不安で眠れない」「ささいなことでイライラしてしまう」「急に気持ちが落ち込む」といった状態になっていませんか?

もしそうなら、それはあなたの心が弱いからではなく、治療で使っている「ステロイド(プレドニゾロン等)」の副作用である可能性が高いのです。

「ステロイド精神病」という事実

顔面神経麻痺の急性期には、炎症を強力に抑えるためにステロイドを大量に投与することがあります。この副作用として、以下のような精神症状が出ることが医学的に知られています。

  • 不眠、うつ状態、強い不安感
  • イライラ、気分が高ぶって落ち着かない

これらの症状は、薬を飲み始めてから数日以内という早い段階で現れることがあります。「今つらいのは薬の影響なんだ」と知るだけで、少し気持ちが楽になるはずです。お薬が減っていくとともに症状も落ち着いていきますので、安心してください。


表情が作れない「孤独」と、周囲の言葉

顔の半分が動かないことで、感情がうまく伝わらないもどかしさは、経験した人にしかわからない本当につらいものです。

  • 誤解されるつらさ: 「怒っているのか?」「元気がないな」と誤解されるのが嫌で、対人関係を避けてしまう。
  • 言葉のプレッシャー: 周囲が良かれと思ってかけてくれる「早く良くなるといいな」「頑張って笑ってみて」という言葉が、今のあなたには重荷になっているかもしれません。

また、食事中に口からこぼれてしまう、目が乾燥して痛むといった身体的な不便さも、大きなストレスの要因になります。


世代や立場で違う「つらさ」の質

悩みの「中身」は、人それぞれ違って当たり前です。自分の悩みを「これくらいのこと」と過小評価しないでください。

  • 20代・30代の方: 「元の顔に戻るのか?」「仕事や人間関係はどうなるのか?」と、外見の変化(コスメティックな悩み)への恐怖を強く感じるのは、当然の反応です。
  • 働き盛りの世代: 仕事への支障や、休職による焦り、職場でのコミュニケーションなど、社会的立場への不安が大きくなります。
  • 高齢の方: 「目が乾いて痛い」「食べにくい」といった機能的な不自由や、持病への影響に不安を感じやすくなります。

「心を休めること」は、立派な治療です

実は、精神的なケアは単なる「慰め」ではなく、神経を治すための「物理的な治療」でもあります。

強い不安やストレスを感じ続けると、交感神経が優位になり、血管が収縮します。すると、お顔の神経に届くはずの酸素や栄養が不足し、神経の再生を遅らせてしまうという「悪循環」に陥ってしまうのです。

「リラックスすること」「心を落ち着かせること」は、お薬を飲むのと同じくらい、神経を再生させるために不可欠な要素です。


前向きに過ごすための具体的な工夫

少しでも心の負担を減らすために、実践してほしい工夫があります。

  • メイクやマスクを活用する: アイライナーなどで左右差をカバーしたり、お気に入りのマスクやサングラスを使うことで、外出時の心理的な苦痛を和らげることができます。
  • 医師に相談する: 眠れない、不安が強すぎると感じたら、遠慮なく主治医に相談してください。睡眠導入剤や安定剤の手助けを借りることは、回復のための賢い選択肢です。
  • 周囲に伝えてしまう: 信頼できる人には「今は顔が動かしにくくて、表情が作れない時期なんだ」と先に伝えておくことで、対人関係のプレッシャーが軽くなることがあります。

まとめ

顔面神経麻痺を乗り越える道のりは、決して一人で背負い込むものではありません。

今は、鏡を見てため息をついてもいいし、外に出たくないと思ってもいい時期です。そんな自分を許してあげてください。心が少し落ち着くだけでも、神経の回復にはプラスに働きます。

適切なケアを続けながら、少しずつお顔の機能を取り戻していく道のりがあります。もし「今の自分の状態で鍼灸を受けてもいいのか?」といったタイミングのご相談や、日常生活でのセルフケアについて知りたいことがあれば、いつでもお気軽にお尋ねください。専門的な視点から丁寧にお答えします。

顔面神経麻痺の鍼灸外来

顔面神経の状態を、耳の反応を通して客観的に捉えるための方法です。

アブミ骨筋反射を測定する様子

顔面神経の反応を確認する検査の一例

「病院での治療は終わったけれど、顔の動きが戻らない」

「後遺症が残らないかが心配」

私たちはそうした不安を抱える患者さんと40年間向き合ってきました。

当院では、アブミ骨筋反射を確認します。顔面神経は、耳の奥にある小さな筋肉(アブミ骨筋)にもつながっています。 音に対するこの筋肉の反応を確認することで、顔面神経が刺激に反応できる状態かを知る重要な手がかりになります。

この検査には専門機器と解析技術が必要なため、一般的な鍼灸院で行われることはまずありません。 感覚や印象だけに頼らず、今の体の状態を落ち着いて見つめたい方のための情報提供の場として、 ご相談をお受けしています。

【参考文献】

この記事は、以下の資料に基づき作成されました。

  • 顔面神経麻痺のリハビリテーション(医歯薬出版株式会社)
  • 顔面神経麻痺が起きたらすぐ読む本(PHPエディターズ・グループ)
  • 鍼灸療法技術ガイドⅡ(医歯薬出版社)

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この記事を書いた人

耳鼻咽喉科疾患 認定鍼灸師 / 宮原 魁都

プロサッカー選手への夢は膝の大怪我で絶たれたが、鍼が持つ「再生と癒しの力」に魅了され、鍼灸の道に進む。運動器疾患の治療を得意としているが、ずば抜けた根性と精神力で院長からの難題を次々クリアし、現在は耳鼻科疾患の鍼治療でも成果を上げている。

耳鼻咽喉科疾患 認定鍼灸師 / 宮原 魁都

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耳鼻咽喉科疾患 認定鍼灸師 / 宮原 魁都

プロサッカー選手への夢は膝の大怪我で絶たれたが、鍼が持つ「再生と癒しの力」に魅了され、鍼灸の道に進む。運動器疾患の治療を得意としているが、ずば抜けた根性と精神力で院長からの難題を次々クリアし、現在は耳鼻科疾患の鍼治療でも成果を上げている。

耳鼻咽喉科疾患 認定鍼灸師 / 宮原 魁都