
「顔面神経麻痺」と診断されたとき、誰もが「元の顔に戻れるのか」という不安で胸がいっぱいになります。
多くの場合はお薬での治療が中心となりますが、ここで大切になるのが、自分の麻痺が「ベル麻痺」なのか、あるいは「ハント症候群」なのかを正しく知ることです。
例えるなら、ベル麻痺が「おとなしい猫」だとすれば、ハント症候群は「牙をむくトラ」に近い存在です。どちらも同じ猫科(ヘルペスウイルス科)のウイルスが原因ですが、その性質も、神経を傷つける力も、全くの別物なのです。
1. 原因の違い:同じヘルペスでも「破壊力」が違う
どちらも体内の神経節に潜んでいたウイルスの「再活性化」ですが、神経を攻撃するプロセスが異なります。
- ベル麻痺(単純ヘルペスウイルス): いわゆる「口唇ヘルペス」のウイルスが原因です。炎症によって神経が腫れ、骨のトンネル内で一時的に圧迫されることで麻痺が起きます。
- ハント症候群(水痘・帯状疱疹ウイルス): 子供の頃の「水ぼうそう」のウイルスが原因です。このウイルスは非常に執念深く、神経細胞そのものに強い炎症を起こし、ダメージを与えます。
特に気をつけたいのが、水ぶくれの出ないハント症候群、いわゆる「隠れハント(ZSH)」です。見た目はベル麻痺のようでも、中身がハント症候群であれば、通常の治療だけでは不十分なことがあります。自分がどちらのタイプなのか、初期にしっかり見極めることが、将来の表情を守るための第一歩になります。
2. 症状の違い:耳や聞こえに出る「SOSサイン」
ベル麻痺は顔を動かなくするだけですが、ハント症候群は、隣接する神経にも炎症が広がることがあります。
- ベル麻痺: 主な症状は「顔が動かないこと」です。耳の後ろが重だるく痛むことはありますが、耳の中や聞こえに異常が出ることは稀です。
- ハント症候群: 顔の麻痺に加え、耳の穴やたぶんに激しい痛みや水ぶくれが現れます。さらに、顔面神経のすぐ隣を通る「聴神経」にも炎症が及ぶことがあるため、ひどい難聴やめまい、耳鳴りを伴うのが特徴です。
もし「音が響いて聞こえる」「世界が回る」と感じるなら、それは神経が悲鳴を上げているサイン。より手厚いケアと、慎重な経過観察が必要な局面です。
3. 経過と回復率の違い:完治への道のり
この「経過の差」を理解しておくことは、治療期間中の心の平穏を保つために欠かせません。
- ベル麻痺の回復率: 適切に治療を行えば、約90%以上の方が完治を目指せます。
- ハント症候群の回復率: 適切にお薬を使っても、完全に元の顔に戻る方は約60〜70%にとどまります。つまり、3〜4割の方は何らかの後遺症が残る可能性があるということです。
神経に強いダメージが加わっている場合、再生には1日1mmという大変な時間がかかります。動き出しまでに3〜4ヶ月かかることも珍しくありません。回復途中に強い筋トレや電気刺激(低周波)を行うと、神経が誤った筋肉につながり、「病的共同運動」を招くことがあります。「動かさない勇気」を持って、静かに回復を待つことが何よりのリハビリになります。
4. まとめ:納得して次の一歩を踏み出すために
顔面神経麻痺の治療は、多くの場合、手術をしない保存療法が中心です。だからこそ、「どのタイプなのか」を丁寧に見極めることが、その後の経過を大きく左右します。
回復が順調なケースもあれば、神経がゆっくり再生を待っているケースもあります。
私たちはまず、「今、神経がどこまで反応できる状態なのか」を確認します。
焦らず、しかし見逃さず。神経が再び筋肉に届く道筋を、静かに整えていきます。
顔面神経麻痺の鍼灸外来
顔面神経の状態を、耳の反応を通して客観的に捉えるための方法です。
顔面神経の反応を確認する検査の一例
「病院での治療は終わったけれど、顔の動きが戻らない」
「後遺症が残らないかが心配」
私たちはそうした不安を抱える患者さんと40年間向き合ってきました。
当院では、アブミ骨筋反射を確認します。顔面神経は、耳の奥にある小さな筋肉(アブミ骨筋)にもつながっています。
音に対するこの筋肉の反応を確認することで、顔面神経が刺激に反応できる状態かを知る重要な手がかりになります。
この検査には専門機器と解析技術が必要なため、一般的な鍼灸院で行われることはまずありません。 感覚や印象だけに頼らず、今の体の状態を落ち着いて見つめたい方のための情報提供の場として、 ご相談をお受けしています。
参考文献
この記事は、以下の資料に基づき作成されました。
- 顔面神経麻痺のリハビリテーション(医歯薬出版株式会社)
- 顔面神経障害(中山書店)
- 鍼灸臨床メカニズム最新科学(医歯薬出版株式会社)
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