顔面神経麻痺はストレスが原因?|発症と回復を妨げる二重の影響を解説

「ストレス」が顔面神経麻痺を引き起こす?不安を断ち切るために、病院での治療後に「本当にすべきこと」を詳しく解説します。

ある朝、鏡を見て愕然とする。昨日まで当たり前だった自分の顔が、思うように動かない。そんな衝撃のなかにいる方に、まずお伝えしたいことがあります。

顔面神経麻痺という病は、心と体に負担がかかり続けたとき、体が「少し休んでほしい」と知らせてくれるサインであることも少なくありません。

この病気とストレスの間には、いわば「二階建て」のような根深い悪循環が存在します。なぜストレスが原因で発症し、そして発症後の不安がなぜ回復を遅らせてしまうのか。その仕組みを紐解きながら、今のあなたに一番必要な「心の持ち方」について、静かにお話ししてみたいと思います。

1. 【一階部分】ストレスが招く「ウイルスの目覚め」

顔面神経麻痺(ベル麻痺やハント症候群)の多くは、体内に潜んでいたウイルスの「再活性化」が原因です。その引き金を引くのが、日々積み重なったストレスによる免疫力の低下です。

私たちの体には、本来ウイルスを抑え込む力が備わっています。しかし、仕事のしすぎや睡眠不足、あるいは深い悩み事で心が休まらない状態が続くと、自律神経のなかの「交感神経」が過剰に昂ぶります。すると血管がギュッと収縮し、全身の血の巡りが悪くなってしまいます。

血液は、免疫の主役である白血球などを運ぶ大切な道です。血流が滞れば、免疫細胞が体の隅々まで届かなくなり、普段は大人しく潜伏していたウイルスが、その隙を突いて暴れだす。これが、ストレスが「一階部分」として病気を引き起こす仕組みです。

2. 【二階部分】発症したこと自体が「新たなストレス」に

病気になってしまった後、今度はその症状自体が「二階部分」の強烈なストレスとなって、あなたに覆いかぶさってきます。

  • 容貌の変化による孤独感 昨日まで左右対称だった自分の顔が変わってしまった。その喪失感や、人に見られることへの羞恥心から、どうしても外に出るのが億劫になり、引きこもりがちになります。
  • 日常生活の機能障害 「水が口からこぼれる」「目が乾いて痛い」「うまく喋れない」。こうした不自由さは、想像以上に心を削るものです。対人関係においても、自分の表情が伝わらないもどかしさが、さらなる孤独感を生んでしまいます。
  • 「一生治らないのでは」という予期不安 「脳卒中ではないか」という恐怖や、将来への不安。こうした「予期不安」が常に頭を離れず、心が休まる暇もありません。
    ですが、ここで一度、ゆっくり息を吐いてみてください。顔面神経麻痺そのものが、命に関わる病気ではないということ。まずは、その事実だけでも、そっと胸に置いておいてほしいのです。

3. 【悪循環】「ストレスの二階建て」が治癒を妨げる

ここが一番の正念場です。病気のショック(二階)で悩み続けると、そのストレスがさらに免疫(一階)を弱らせ、治りを遅くするという「負のスパイラル」に陥ってしまうのです。

神経が傷ついたとき、その修復には新鮮な酸素と栄養を運ぶ「豊かな血流」が欠かせません。しかし、悩みすぎて交感神経が緊張したままだと、血管は閉じたままになり、神経の修復工事が進みません。

また、不安による不眠は、体を治すためのホルモンバランスを乱します。「早く治さなければ」という焦りそのものが、回復のブレーキになってしまう。これがストレスによる悪循環の正体です。

4. まとめ:この悪循環を断ち切るために

この「二階建ての構造」を解体するためには、お薬の力だけでなく、あなた自身の「休む勇気」が必要です。

  • 「休む」ことは立派な治療です 今は「無理をしすぎているよ」という体からのサイン。まずはたっぷり眠り、休息をとることを、自分に許してあげてください。
  • 体を温め、心を緩める 温かいお湯に浸かることは、副交感神経を優位にし、閉じていた血管を広げてくれます。血流が良くなれば、免疫細胞も活発に働きだします。
  • 正しい知識で、根拠のない不安を手放す この病気は命に関わるものではありません。時間はかかりますが、人間の体には再生する力が備わっています。専門医としっかり話し合い、見通しを立てることで、少しずつ「心の二階部分」を取り除いていきましょう。

焦らなくて大丈夫です。まずは温かい飲み物でも飲んで、深く呼吸をしてみてください。あなたの心と体がリラックスすること。それが、神経の再生にとって最高の応援になるのですから。

顔面神経麻痺の鍼灸外来

顔面神経の状態を、耳の反応を通して客観的に捉えるための方法です。

アブミ骨筋反射を測定する様子

顔面神経の反応を確認する検査の一例

「病院での治療は終わったけれど、顔の動きが戻らない」

「後遺症が残らないかが心配」

私たちはそうした不安を抱える患者さんと40年間向き合ってきました。

当院では、アブミ骨筋反射を確認します。顔面神経は、耳の奥にある小さな筋肉(アブミ骨筋)にもつながっています。 音に対するこの筋肉の反応を確認することで、顔面神経が刺激に反応できる状態かを知る重要な手がかりになります。

この検査には専門機器と解析技術が必要なため、一般的な鍼灸院で行われることはまずありません。 感覚や印象だけに頼らず、今の体の状態を落ち着いて見つめたい方のための情報提供の場として、 ご相談をお受けしています。

参考文献

この記事は、以下の資料に基づき作成されました。

  • 奇跡の温泉免疫療法(共栄書房)
  • 顔面神経麻痺になったらすぐ読む本(PHPエディターズ・グループ)
  • 顔面神経麻痺を治す(全日本病院出版社)

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この記事を書いた人

院長 / 吉池 弘明

頭の中は、つねに愛する家族と鍼治療のことでいっぱい。耳鼻科疾患治療への探究心が強く、日々新たな治療法を模索する「はり・きゅうの日生まれ」62歳。お医者様とは違った角度からの聴力検査と全身検査を取り入れ、のべ25万人を検査。全国から来院する患者さんへの治療成果を上げている。

院長 / 吉池 弘明

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頭の中は、つねに愛する家族と鍼治療のことでいっぱい。耳鼻科疾患治療への探究心が強く、日々新たな治療法を模索する「はり・きゅうの日生まれ」62歳。お医者様とは違った角度からの聴力検査と全身検査を取り入れ、のべ25万人を検査。全国から来院する患者さんへの治療成果を上げている。

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