
「鏡を見たら、少しだけ口角に力が入った気がする」
「うがいのときに、水が漏れる量が減ってきた」
発症から3〜4ヶ月。長く、出口の見えないトンネルを歩いてきたあなたにとって、それは待ちに待った「希望の光」ですよね。顔の張りが少し戻ってきたその瞬間、心からホッとされたことと思います。
でも、専門家として、そして一人の女性として、ここでお伝えしなければならない大切なことがあります。実は、この「回復の兆し」を感じたときこそが、後遺症をできるだけ抑え、きれいな回復につなげられるかどうかの大切な時期なのです。
1. その「回復のサイン」が意味する、身体の内側の変化
あなたが感じた小さな変化は、医学的には「神経がようやく筋肉に到達した」という素晴らしい証拠です。
神経は1日1mmの旅をしている
私たちの神経は、耳の奥にある損傷部位から顔の筋肉を目指して、1日に約1mmという気が遠くなるような速さで再生しています。その距離は約90mm。動き出しまでに3〜4ヶ月かかるのは、神経が一生懸命に旅をして、ようやくゴールである筋肉に「タッチ」したからなのです。
「治った」ではなく「つながり始めた」時期
注意したいのは、今はまだ神経が「正常に戻った」わけではなく、ようやく「配線をつなぎ直している最中」だということです。この繊細な時期に、神経が正しい筋肉につながるか、それとも間違った場所へ混線してしまうかで、その後の仕上がりが決まってしまいます。
2. 焦りが招く「後遺症」の罠
回復の兆しが見えると、「もっと頑張れば早く元に戻るはず!」と、筋トレのように力を入れて顔を動かしたくなりますよね。でも、その「頑張り」が、実は後遺症を引き起こす最大の原因になってしまうのです。
×強い運動は避けるべき行為
鏡の前でギュッと目を閉じたり、口を大きく動かしたりする「筋トレ」は、この時期は絶対に避けてください。無理に動かそうとすると、神経が本来とは違う筋肉へ枝を伸ばす「スプルーティング」という現象が起き、神経の混線を招きます。 これが、「口を動かすと目が勝手に閉じてしまう(病的共同運動)」という、最も避けたい後遺症を悪化させてしまうのです。
× 低周波治療(電気刺激)の危険性
「電気でピクピクさせればリハビリになる」という考えも、現在は明確に否定されています。顔の繊細な筋肉全体を一塊にして収縮させてしまう電気刺激は、神経の混線を助長し、「顔面拘縮(顔がこわばってひきつる)」を誘発する「有害なもの」として現在の医学では推奨されていません。
3. 笑顔を守るための「正しい回復期の過ごし方」
兆しが見えた今、必要なのは「頑張って動かすこと」ではなく、「優しく整えること」へのシフトです。
- 動かさない勇気」を持つ あえて大きく動かさないことが、きれいに治すための近道です。「イー」「ウー」といった激しい動きは避け、会話や食事も必要最小限の穏やかな動きを意識しましょう。
- 優しくマッサージでほぐす(筋伸張) 動かない間に縮こまってしまった筋肉を、手で優しく伸ばしてあげてください。特に頬の内側に指を入れ、外側へ向かって優しくストレッチするマッサージは、顔のこわばりを防ぐのに非常に有効です。
- 鏡を見て、脳を再教育する(バイオフィードバック) 鏡を見ながら「ゆっくり、小さく」動かします。もし口を動かしたときに目がピクッと閉じそうになったら、すぐに動きを止めてください。余計な場所が動かない範囲で練習を繰り返すことで、脳に「正しい配線」を覚えさせていくのです。
4. まとめ:焦らず、長い目で自分をいたわる
3〜4ヶ月という月日は、本当に長かったと思います。ようやく見えた兆しを、確かな回復につなげるために、今は「頑張らないリハビリ」を選んでください。
最新のガイドライン(2023年版)でも、こうした回復期のデリケートな管理が、予後を大きく左右すると示されています。自己流の努力で無理をせず、専門的なケアを取り入れながら、一歩ずつ進んでいきましょう。
あなたのその自然な笑顔が戻る日へ、確実に近づいています。
顔面神経麻痺の鍼灸外来
顔面神経の状態を、耳の反応を通して客観的に捉えるための方法です。
顔面神経の反応を確認する検査の一例
「病院での治療は終わったけれど、顔の動きが戻らない」
「後遺症が残らないかが心配」
私たちはそうした不安を抱える患者さんと40年間向き合ってきました。
当院では、アブミ骨筋反射を確認します。顔面神経は、耳の奥にある小さな筋肉(アブミ骨筋)にもつながっています。
音に対するこの筋肉の反応を確認することで、顔面神経が刺激に反応できる状態かを知る重要な手がかりになります。
この検査には専門機器と解析技術が必要なため、一般的な鍼灸院で行われることはまずありません。 感覚や印象だけに頼らず、今の体の状態を落ち着いて見つめたい方のための情報提供の場として、 ご相談をお受けしています。
参考文献
この記事は、以下の資料に基づき作成されました。
- 顔面神経麻痺のリハビリテーション(全日本病院出版社)
- 顔面神経麻痺が起きたらすぐに読む本(PHPエディターズ)
- 顔面神経麻痺の治療アプローチ(全日本病院出版会)
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