
朝、鏡を見て「あれ?顔が動かしにくい」「口から水がこぼれる」……そんな突然の症状に、驚きと不安でいっぱいになっている方も多いのではないでしょうか。
病院を受診して「顔面神経麻痺」と診断されたとき、一刻も早く治したいと焦るあまり、鏡の前で一生懸命に顔を動かす練習をしていませんか?
実は、顔面神経麻痺の回復において、発症から数ヶ月間は「頑張らないこと」が何よりも重要なのです。
良かれと思ってやったリハビリが、かえって「口を動かすと目が閉じる」「顔がひきつる」といった後遺症を引き起こす原因になることもあります。今回は、きれいに治すために「絶対にやってはいけない5つのこと」を専門家の視点で解説します。
なぜ「頑張るリハビリ」がダメなのか
神経が再生しようとしている時期に無理な負荷をかけると、神経の行き先が混線してしまう「迷入再生(めいにゅうさいせい)」という現象が起こります。
一度混線してしまうと、後から整えるのに時間がかかることがあります。後遺症を残さないためには、まず「神経が正しく伸びる環境」を整えてあげることが大切です。
1. 【睡眠】そのまま無防備に寝てはいけません
麻痺になると、自分の意思では目が閉じきらない「兎眼(とがん)」という状態になります。特に寝ている間は無防備です。
- なぜダメなのか: 寝ている間に角膜が露出し、乾燥して傷ついてしまいます。最悪の場合、視力低下や角膜潰瘍を招く恐れがあります。
- 対策: 就寝時は、医師から処方された眼軟膏を塗り、医療用テープなどでまぶたを優しく閉じて固定してください。
2. 【会話】無理に大きくしゃべってはいけません
「リハビリのためにたくさん話そう」という意識は、初期段階では逆効果になることがあります。
- なぜダメなのか: 私たちは1日に何万回も表情筋を使っています。発症初期の弱った神経に「無理にしゃべろう」とする強い負荷をかけると、神経の混線を誘発しやすくなります。
- 対策: 発症から3ヶ月頃までは、必要最低限の会話に留めましょう。筆談や身振り手振りを活用し、意識して「顔を休ませる」時間を増やしてください。
3. 【運動】百面相や筋トレをしてはいけません
これが最も多くの方が陥りやすい「やってはいけないリハビリ」です。
- なぜダメなのか: 脳から「動け!」という強い信号を送り続けると、再生中の神経がパニックを起こし、本来つながるべきではない筋肉へ誤ってつながってしまいます(これが病的共同運動の正体です)。
- 対策: 神経が筋肉に届くまでには数ヶ月かかります。この時期に必要なのは筋トレではなく、筋肉が固まらないように手で優しくほぐす「マッサージ(ストレッチ)」のみです。「動かさない勇気」を持ってくださいね。
4. 【連動】目と口を「一緒に」動かしてはいけません
少し動きが出てきた「回復期」に特に注意してほしいポイントです。
- なぜダメなのか: 「口を動かすと目が閉じる」といった誤った連動パターンを放置して動かし続けると、脳がその動きを「正しい」と記憶して定着させてしまいます。
- 対策: 鏡を見ながら、動かしたいパーツ以外が動かないよう手で押さえて練習する「分離運動」を心がけましょう。ゆっくり、小さく動かすのがコツです。
5. 【食事】「麺類をすする」「硬いものを噛む」のは控えましょう
毎日の食事動作が、実は後遺症の大きな引き金になることがあります。
- なぜダメなのか: 「すする」「強く噛む」動作は口周りの筋肉に非常に強い負荷をかけます。これが「食べると目が閉じてしまう」といった症状を悪化させます。
- 対策: 麺類はすすらずに食べ、ガムなどの硬いものは避けましょう。また、食事中は意識して「目をパッチリ開けて食べる」ようにすると、目と口の連動を防ぐ良い訓練になります。
まとめ:時期によって「正解」は変わります
顔面神経麻痺の治療は、今の自分のフェーズを見極めることが大切です。
- 発症〜3ヶ月(急性期): 絶対安静。無理に動かさず、保温と優しいマッサージに徹する。
- 4ヶ月以降(回復期): 動き出したら、鏡を見て「目と口を別々に動かす」繊細な練習を始める。
「何もしない」のは不安かもしれませんが、焦って動かすことが、後々「ひきつった顔」を作ってしまうリスクを忘れないでください。
適切なケアを続けながら、少しずつお顔の機能を取り戻していく道のりがあります。もし「今の自分の状態で鍼灸を受けてもいいの?」といったタイミングのご相談や、日常生活でのセルフケアについて知りたいことがあれば、いつでもお気軽にお尋ねください。専門的な視点から丁寧にお答えします。
顔面神経麻痺の鍼灸外来
顔面神経の状態を、耳の反応を通して客観的に捉えるための方法です。
顔面神経の反応を確認する検査の一例
「病院での治療は終わったけれど、顔の動きが戻らない」
「後遺症が残らないかが心配」
私たちはそうした不安を抱える患者さんと40年間向き合ってきました。
当院では、アブミ骨筋反射を確認します。顔面神経は、耳の奥にある小さな筋肉(アブミ骨筋)にもつながっています。
音に対するこの筋肉の反応を確認することで、顔面神経が刺激に反応できる状態かを知る重要な手がかりになります。
この検査には専門機器と解析技術が必要なため、一般的な鍼灸院で行われることはまずありません。 感覚や印象だけに頼らず、今の体の状態を落ち着いて見つめたい方のための情報提供の場として、 ご相談をお受けしています。
【参考文献】
この記事は、以下の資料に基づき作成されました。
- 顔面神経麻痺のリハビリテーションによる機能回復(全日本病院出版会)
- 顔面神経麻痺のリハビリテーション(全日本病院出版会)
- 顔面神経麻痺治癒への10の鍵(医学書院)
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