
朝、鏡を見て「あれ?顔が動かしにくい」「口から水がこぼれる」……そんな突然の症状に、驚きと不安でいっぱいになっている方も多いのではないでしょうか。
病院を受診して「顔面神経麻痺」と診断されたとき、自分の体のことももちろんですが、次に頭をよぎるのは「これって、家族や周りの人にうつるの?」ということですよね。
特に小さなお子さんや妊婦さんが身近にいる場合、どう接すればいいのか悩んでしまうはず。今回は、顔面神経麻痺の感染性と、私たちが知っておくべき正しい知識について、専門的な視点から解説します。
結論:麻痺そのものはうつりませんが「ウイルス」には要注意
まず、一番安心してお伝えしたい結論からお話しします。
顔面神経麻痺という「症状」そのものが、風邪のように人から人へうつることはありません。
「私の顔が動かないのは病気のせいだから、誰かに顔を近づけたら同じ症状にさせてしまうかも……」と、過度に怖がって家族を避ける必要はないので、まずは安心してくださいね。
なぜ「麻痺」はうつらないの?
顔面神経麻痺の多くは、外部から新しくウイルスが入ってきて発症するのではなく、実は「自分の中にずっといたウイルス」が原因だからです。
子供の頃にかかったウイルスの生き残りが、神経の奥(膝神経節など)で何十年も眠っていて、疲れやストレスで免疫が落ちたタイミングで「再活性化」して暴れ出す。つまり、外部からの感染ではなく「体の内側で静かに目を覚ましたウイルス」によって起こるものなのです。
ですから、顔面神経麻痺は人にうつる病気ではありません。免疫のバランスが崩れたときに起こる、内側からのトラブルなのです。
原因となる2つのウイルスと感染のリスク
症状自体はうつりませんが、原因となっている「ウイルス」そのものは感染力を持っています。原因となる代表的な2つのパターンについて解説します。
① ベル麻痺(全体の約70%以上)
原因は「単純ヘルペスウイルス1型 (HSV-1)」です。口唇ヘルペス(熱の華)と同じウイルスです。
- 感染力: 多くの大人はすでにこのウイルスを体内に持っているため、誰かにうつして急に麻痺を発症させるリスクは低いと考えられます。
- 注意点: ただし、唾液や患部への接触で感染する可能性はゼロではありません。念のため、タオルや食器の共用は避けておくと安心です。
② ハント症候群(耳の痛みや水ぶくれがあるタイプ)
原因は「水痘・帯状疱疹ウイルス (VZV)」です。水ぼうそうと同じウイルスです。
- 感染力: 非常に強く、耳や口の中にできる「水ぶくれ(水疱)」の中には大量のウイルスが含まれています。
- 重要事項: まだ水ぼうそうにかかったことがない人にうつった場合、相手は「顔面神経麻痺」になるのではなく、「水ぼうそう」として発症します。
【重要】特に気をつけてあげたい相手
特に「ハント症候群」の疑いがあるときは、以下の人との接触に十分注意してください。
- 水ぼうそうにかかったことがない乳幼児(ワクチン未接種の子)
- 妊婦さん(妊娠中に初めて感染すると、赤ちゃんの健康に影響が出るリスクがあります)
- 免疫力が低下している方(病気療養中の方など)
水ぶくれが乾いて「かさぶた」になるまでは感染力があります。患部を触った手で他人に触れないよう、こまめな手洗いを徹底しましょう。
なぜ「今」発症したのか?(再活性化のメカニズム)
「昨日まで元気だったのに、どうして?」と自分を責めてしまうかもしれません。でも、これは誰かの咳を浴びて感染したわけではなく、「免疫力の低下」が引き金となっています。
- ウイルスの再活性化: 過労、精神的なストレス、睡眠不足、あるいは寒い風に当たりすぎたこと。そんな積み重ねで体の抵抗力が落ちたとき、眠っていたウイルスが元気を取り戻して神経を攻撃し始めます。
もしかするとそれは、体が「少し立ち止まってほしい」と伝えているサインだったのかもしれません。
未来の自分と家族を守る予防法
今回のことをきっかけに、ご家族の予防についても知っておくと安心です。
- お子さんのワクチン: 現在、お子さんの水痘(水ぼうそう)ワクチンは定期接種になっています。しっかり受けておくことで、将来的なハント症候群のリスクを減らせます。
- 50歳以上のご家族へ: 帯状疱疹ワクチンを接種することで、発症や重症化を予防できる可能性があります。
まとめ
顔面神経麻痺は、決してあなたの不摂生や、誰かのせいではありません。
鏡を見るたびに不安を感じることもあるかと思いますが、顔面神経麻痺の回復には、まずは焦らず心身を休めることが何より大切です。
適切なケアを続けながら、少しずつお顔の機能を取り戻していく道のりがあります。もし「今の自分の状態で鍼灸を受けてもいいの?」といったタイミングのご相談や、日常生活でのセルフケアについて知りたいことがあれば、いつでもお気軽にお尋ねください。専門的な視点から丁寧にお答えします。
顔面神経麻痺の鍼灸外来
顔面神経の状態を、耳の反応を通して客観的に捉えるための方法です。
顔面神経の反応を確認する検査の一例
「病院での治療は終わったけれど、顔の動きが戻らない」
「後遺症が残らないかが心配」
私たちはそうした不安を抱える患者さんと40年間向き合ってきました。
当院では、アブミ骨筋反射を確認します。顔面神経は、耳の奥にある小さな筋肉(アブミ骨筋)にもつながっています。
音に対するこの筋肉の反応を確認することで、顔面神経が刺激に反応できる状態かを知る重要な手がかりになります。
この検査には専門機器と解析技術が必要なため、一般的な鍼灸院で行われることはまずありません。 感覚や印象だけに頼らず、今の体の状態を落ち着いて見つめたい方のための情報提供の場として、 ご相談をお受けしています。
参考文献
この記事は、以下の資料に基づき作成されました。
- 顔面神経リハビリテーション(イテルナ出版)
- 顔面神経麻痺治癒への10の鍵(医学書院)
- 顔面神経麻痺ガイドライン〈2023年版〉(日本顔面神経学会)
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